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2006年9月25日 (月曜日)

【映画評】バックダンサーズ!

ダンスに夢を託す若者たちを追いかけた無邪気な青春ダンスムービー。

【満足度:★★★★】(鑑賞日:2006年9月23日)

 時は2010年。とある空き地でダンスに励む若者たち。その若者たちの中で語りぐさとなっている伝説の女性ダンスグループがあった。その名も“バックダンサーズ”。この物語はその彼女らのサクセスストーリー。
 そして2002年、後にバックダンサーズのメンバーとなる女子高生のミウ(平山あや)とよしか(hiro)は、18歳未満入場おことわりのクラブでの夜遊び中に警察に補導され、高校を退学させられる。行き場を失った二人は、同じくクラブを閉め出されたジュリ(長谷部優)に誘われるまま、例の空き地、通称“ムーンダンスクラブ”で踊り始めるのだった…。

 監督はテレビ出身の永山耕三。『東京ラブストーリー』に代表される90年代トレンディードラマブームを支えた一人。本作では肝となる音楽プロデューサーも兼任。
 バックダンサーズの面々に若者に人気の平山あや、hiro、ソニン、サエコの女性アイドル四人。全編通して華麗なダンスを披露してくれる。

 ダンスシーンの迫力を除いて、内容ははっきりいって薄い。言っちゃなんだが、「これだからテレビ出身監督は」と評したいくらい軽薄。
 でも、でもね、でも憎めない、無邪気な快作なんだな、これが。

 物語はいわゆる“願い続ければ夢は叶う”サクセスストーリー。冒頭ですでに伝説化して始まる構成からして明らかなように、実話でもないのに最初っから決着はついている
 主役であるバックダンサーズたちは、運良くスカウトされることに始まって、非常にわかりやすいご都合主義な展開の連続で、とんとん拍子に成功への道を駆け上がっていく。
 一応、下積みの苦労もある。が、前座としての地方巡業はまるで修学旅行的楽しさに満ちていて、その意味がよくわからないラブロマンスのおまけ付き。
 一応、挫折もある。が、マネージャーの茶野(田中圭)に「なんとかして!」とお願いすればなんとかなってしまう。
 主人公たちの生活感もゼロ。なにせ、最初に飛び出した実家以外、劇中住んでいる家が一瞬たりとも出ない。

 ただ、主役の四人は自然な演技で魅力的。芝居的に巧いかとかは言わずもがなだが、下手さを感じさせない演出はアイドル映画としての観客の期待を裏切らない。
 もちろんダンスシーンに関しては、さすがそれに注力しているだけあって見応え充分。実際のところは、どんどん名を上げていくバックダンサーズ本人らより周りで演じているエキストラ(本物のダンサーたち)の方が巧いのが素人目にも明らかなのだが、そんなことは気にならない。ともかくダンスシーンに関しては、もっと観たいと思わせるぐらい本格的で、それを目当てに劇場へ足を運んでも損はないだろう。

 でも、基本的には旬の女性アイドルとダンスを堪能するためだけの薄っぺらいアイドルダンス映画、っていう印象。ただ、この映画、嫌いじゃないのよ。
 なんでこの映画が理屈を超えて魅力的なのか考えてみたんだが、ひとつにダンス映画として、とにかくダンスで魅了するという軸が終始ぶれることなく、しかもそれに成功していることが大きい。一芸に秀でた映画とでも言おうか。

 それに、添えられた隠し味も効いている。
 実はこの映画、マネージャー・茶野ら脇役たちこそが真の主役と言ってもいい。そのことは『バックダンサーズ!』というタイトルには、陰で支える者への賛歌の意味があることからも自明だろう。
 この映画は、バックダンサーズが成功していく物語であると同時に、陰で活躍する裏方たちが彼女らを成功へ導くサクセスストーリーでもあるのだ。
 そう考えれば、バックダンサーズはことあるごとに「なんとかして!」とお願いするだけで、実際には茶野の奮闘記となっているのも合点がいくだろう。

 そんな中でもこの浮世離れした成功物語映画をぐっと地に足がつくところまで引き寄せている一番の陰の立役者は、売れないオヤジバンド“スチールクレイジー”だ。
 陣内孝則、つのだ☆ひろらが演じるこのバンドは、いうなれば伝説にまで登り詰めるバックダンサーズと表裏一体の存在
 浮き沈みの激しい音楽業界にあって売れなくても続けていくこと。そのことの大変さは多くを語らずとも想像に難くない。
 本来の主役であるはずのバックダンサーズたちにはまるで生活感がないのに、このおじさんたちの口からは「またバイトしなきゃ」やら「バンド五つ掛け持ちしてる」といった生々しいセリフがぽんぽん飛び出す。しかし決してそこに悲壮感はない。好きなことをやり続けられる喜びに裏打ちされた悟りのようにあっけらかんと発せられる。これこそがこの映画の神髄なのだ。

 映画『バックダンサーズ!』の中に描かれたサクセスストーリーは絵空事でしかない。そんなことは毎日世間に揉まれているいい年をした大人なら誰しもわかりきっているだろう。しかし今の情報が氾濫するメディア社会、これから大人になる若者たちにとっては、大人が思う以上に将来に対して懐疑的にならざるを得ない時代でもあるのだ。
 そして、この映画の作り手たちは、そんな“夢物語を語ることすら夢物語”であるこんな時代を憂えているのではないか。
 娯楽映画なんて夢物語を見せてなんぼの世界だ。だが、残念ながら現実はもうそれすら危ういからこそ、このバックダンサーズたちの物語は、最初からリアリティのない都市伝説として語らざるを得なかったのではないか。
 その真意に気づけば、自ずとこの夢物語を支えるバックバンド・スチールクレイジーとはこの映画の作り手たちの代弁者との解釈もできる。スチールクレイジーの面々のぼやきの裏側にある幸福感とは、決して楽な道のりではないにせよ、夢物語を語り続けることのできる制作者たちの喜びにほかならない。

 この映画のラストカット、観客はそこにスチールクレイジーの名を見つけて、ほんの少し幸福感を味わうはずだ。
 それはまさに、この映画が単に成功だけを追い求めた物語ではなく、それを支える者たちを再発見する映画であったことを物語っている。

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【キャスト】平山あや/hiro/ソニン/サエコ/田中圭/陣内孝則/長谷部優/北村有起哉/浅野和之/甲本雅裕/梶原善/橋本さとし/木村佳乃/つのだ☆ひろ/三原康可/山中敦史/舞/小野春菜/立石沙千加/山田歩/中山伸子/真木蔵人/鈴木一真/中村久美/樋渡真司/澁谷武尊/佐藤二朗/軽部真一/深澤里奈/田中要次/KEN(DA PUMP)/豊原功補/石野真子/陣内孝則
【監督】永山耕三 【製作】宇野康秀 【エグゼクティブプロデューサー】河井信哉/星野有香/関一由/会田郁雄 【co.エグゼクティブプロデューサー】宮澤徹/石山信雄 【プロデューサー】梅川治男/山崎雅史 【製作エグゼクティブ】依田巽 【脚本】衛藤凜/永山耕三 【音楽プロデューサー】永山耕三 【音楽】Sin 【アソシエイトプロデューサー】武石宏登/東海林秀文 【ラインプロデューサー】鈴木剛 【撮影】小倉和彦 【美術】稲垣尚夫 【照明】今井勝巳 【録音/整音】横野一氏工 【編集】宮島竜治 【スクリプター】渡邉美恵 【音響効果】齋藤昌利 【スタイリスト】勝俣淳子/江島モモ/与那覇智 【装飾】山田好男 【監督補佐】山本一男 【助監督】荒川栄二 【制作担当】高見明夫 【ダンス監修】松澤いずみ 【コレオグラファー】IZUMI/TERUYA/HIDEBOH/MITTAN/TETSUHARU/伊藤やす子/KEN(DA PUMP)
【製作】ギャガ・コミュニケーションズ/フジテレビジョン/東急レクリエーション/レントラックジャパン/東映ラボ・テック 【配給】ギャガ・コミュニケーションズ 【制作プロダクション】ステューディオ スリー 【著作】「バックダンサーズ!」製作委員会
【公開年】2006年 【製作年】2006年 【製作国】日本 【上映時間】1時間57分
【公式サイト】http://www.b-dancers.jp/

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コメント

 こんにちは。記事内リンク&TB、どうもありがとうございました。

 爽快なダンス・シーンを楽しめた映画でした(^^) 観てよかったです。

投稿 香ん乃 | 2006年9月25日 (月曜日) 12:19

>香ん乃さん
コメントありがとうございます。
ほんと楽しい映画でした。
これからもよろしくです。

投稿 かみぃ@管理人 | 2006年9月25日 (月曜日) 20:01

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