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2004年7月14日 (水曜日)

【映画評】アンブレイカブル

シックス・センス』のM.ナイト・シャマラン監督が再度観客に突きつける衝撃のサスペンス・スリラー。

【満足度:★★★☆】(初掲:2001年3月26日 映画徒然文集

 132人の乗客の内131人が死亡する悲惨な列車事故からたったひとり無傷で生き残った男、デヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)が「なぜ自分だけ?」という疑問に目覚めたとき、彼に隠された謎は驚愕の真実という扉を開き始める…。

 “アンブレイカブル”とは“壊れない奴”の意味。ブルース・ウィリスの出世作『ダイハード』“死んでも死なない奴”とほとんど同義だな。
 さて、“あの”『シックス・センス』のM.ナイト・シャマラン監督とブルース・ウィリスが再びコンビを組んで観客に突きつける衝撃のラストが話題の本作、なのですが、筆者には今回のラストは筒抜けでした。鑑賞中に“読めた”んじゃなく、鑑賞前から“筒抜け”だったのです。雑誌とかの新作紹介であらすじなんかを見ちゃった人で、「きっとこうなんじゃないの?」って思い当たる節があったら、たぶんそれでビンゴ。
 …ったく、宣伝部はなにをやってんだか。こういう作品を「衝撃のラスト」なんて宣伝したら、結局鑑賞後に拍子抜けして、そのことだけで「つまんない」っていう評判になって、この秀作が駄作扱いされちゃって、とどのつまり観客動員数も落ちちゃうだろうに。

 『シックス・センス』のときには「してやられたっ!」っていうあまりの衝撃で、この映画評でも、とにもかくにも観なさいってことに終始し、内容にはほとんど触れなかったのだが、本作の場合、勘のいい人ならちょっとあらすじに触れただけでもラストが読めちゃう。それゆえ今回も、“衝撃のラスト”を楽しみにしている人のためにも、ストーリーには一切触れない。
 だけどね、ぜんぜん“衝撃”じゃないから、そういう意味ではあんまり期待しないほうがいいです。深読みしながら鑑賞すると肩透かしくらうだけ。
 考えてみれば『シックス・センス』のラストって、実は本筋とは関係がない、サブストーリーとしての“落ち”だったんですよ。だから筆者には読めなかった。ストーリーテリングのロジックから読めちゃった人はいるだろうが、それはマニアか業界人の発想。
 しかし本作は、その結末こそが作品のテーマであり、逆説的に、作品のテーマが見えてくれば自ずとその落とし所が定まってしまう。そのくらい至極当然のラスト。そんなとこに頭使うより、この秀悦な作品世界にどっぷり漬かってください。

 本作の価値ってのは、そんなみえみえのラストよりも、そのテーマ性にある。『シックス・センス』のときも東洋の匂いがぷんぷんしたが、この『アンブレイカブル』はさらにそれが極まって、ほとんど哲学映画かはたまた宗教映画かってぐらい。しかもそれを、ある意味その対極に位置するともいえるアメリカン・コミックを題材に描いてしまうところがシャマラン監督の一筋縄でいかない奇才ぶりなのだ。
 上映ののっけから、「アメリカン・コミックの読者数は…」なんてうんちくを字幕テロップで解説して観客を牽制してみせるが、そんなのに惑わされてはいけない。『シックス・センス』の冒頭でもわざわざブルース・ウィリス直筆サイン入りで「この作品には秘密があります…」などと言ってのけた監督の仕業なのだから。
 その後に始まる本編では、映像、セリフを問わず、たどり着くべき結末へ向かっての仕掛けが張り巡らされていく。西洋の人々がどう思うか知る由もないが、東洋人のひとりである筆者としては、そのあざといぐらいの伏線の数々から導かれる答えはひとつでしかなく、今となっては余計な宣伝文句のために深読みし過ぎたことを後悔する。

 伏線とは本来、最後で裏切るための仕掛けという意味ではなく、答えを導くための道しるべである。観客はその伏線一つ一つを心の隅に留め置き、最後の大団円でそれらの持つ意味に大いに納得するものなのだ。それをわかっている監督だからこそ、伏線を隠そうなどとはしない。当然のこととして、まるで諭すように綴られていく。
 そういう意味においてこそ、本作は衝撃的なラストを迎える。それは予想通りではあったが、寸分の狂いもなく、ものの見事に的を射て幕引きをする。デヴッド・ダンの開いた扉の向こうにあるのは、彼に隠された秘密・真実に留まらず、世の不条理に対する真理そのものなのだ。

 最後に、この作品はかなり観客を選ぶと言っていい。その思想性もそうだし、アメリカン・コミックという題材も万人に馴染めるものではない。
 この作品世界を絵空事と言ってしまえば退屈な自主制作映画にしかならないし、新しい切り口の文芸作品と思えれば、その切れ味に酔うことができる。
 筆者は辛うじて後者であったが、さて貴方は?

【キャスト】ブルース・ウィリス/サミュエル・L.ジャクソン/ロビン・ライト・ペン/スペンサー・トリート・クラーク/シャーレーン・ウッダード
【監督・脚本・製作】M.ナイト・シャマラン 【製作】バリー・メンデル/サム・マーサー 【製作総指揮】ゲイリー・バーバー/ロジャー・バーンバウム 【撮影】エドゥアルド・セラ 【プロダクション・デザイナー】ラリー・フルトン 【編集】ディラン・ティシュナー 【音楽】ジェームズ・ニュートン・ハワード 【コスチューム・デザイナー】ジョアンナ・ジョンストン
【原題】UNBREAKABLE 【字幕翻訳】松浦美奈 【製作年】2000年 【製作国】アメリカ 【上映時間】1時間47分

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