【映画評】交渉人
らつ腕交渉人同志が犯人と交渉人として対決する知的サスペンス。
シカゴ警察のらつ腕交渉人が相棒殺しの濡れ衣を晴らすためビルに篭城。その交渉相手としてほとんど面識のないもう一人のらつ腕交渉人を指名し、身内の中の真犯人を暴こうとする…。
一応、真犯人を突き止めようとするサスペンス映画というジャンル。ゆえに、あまり詳しくは書けないのだが、正直言ってそういう意味では物足らない。この手のジャンルに見慣れていれば真犯人なんてだいたい予想がつく。
天才交渉人同士の頭脳戦を期待してもいけない。意外とたいしたことはやらない。“IQ180の駆け引き”なんて宣伝用のキャッチコピーなだけ。
あと、警察の突撃シーンなどを取り上げてアクション映画に分類するのは的外れもいいとこ。
この作品の本質は、オープニングのコラージュで明らかなように友情ドラマである。
『交渉人』というタイトルに騙されて知的サスペンスとしてだけ取り上げられがちだが、相棒を殺された男の話であることを認識して欲しい。
長年一緒に働いてきた仲間たちから相棒殺しとして白い目で見られる。そういう状況こそがこの作品の要だったりするのだ。
付け加えるなら、殺された相棒はその白い目で見ている他の警察官にとっても仲間だったのである。仮に誤解であれ、目の前にいる身内のはずの交渉人が犯人らしいとなればそいつを捕まえる、もしくはいっそのこと殺してしまおうと躍起になるのは、そこにまた友情があったからにほかならない。
そして、そんな私情も絡む中、篭城している交渉人から指名を受けたがためにやってきたのが、“よそ者”交渉人なのだ。
このよそ者交渉人のほうが状況的にはもっと複雑。
濡れ衣を着せられた方は良くも悪くも周りは元仲間たちだが、指名を受けた彼は見ず知らずの連中の中で篭城している交渉人と頭脳の限りを尽くして交渉せねばならない上に、その見ず知らずの連中の中に実は真犯人がいるという何重もの板挟みにあう。
大作志向で登場人物の心や情の部分が弱いことの多いハリウッド作品の中にあって、久々にいい感じの佳作。
やっているのは法廷劇と一緒で会話がほとんど。たまにある味付けとしてのアクションシーンに翻弄されず登場人物の状況を見逃さないで欲しい。
真犯人探しという縦糸があるがゆえにわざと悪役っぽく描かれていたりする脇役たちが、実はきっと苦悩しながら職務をまっとうしてんだろうなと思いながら観ると、この作品は何倍にもおもしろくなる。何度も観て味の出てくるタイプの作品だ。
セオリー通りふたりの交渉人の間にもいつしか友情が芽生えてくる。しかしこれがまた、あまり声だかには語ろうとしないところがにくい。
よそ者交渉人はあくまで職務にまっとうであろうとし、それこそけんか腰の口調でにらみ合ったとき、プロ同士の腹の探り合いであると同時に心で語り合うっていうのは演技力のなせる業。
惜しむらくはクライマックスがちょっとあっけないことと、BGMがどこかで聞いたことがあるような気がしてしまうこと。
しかしそれでもなお快作であることに変わりない。宣伝文句の本年度アカデミー賞有力っていうのはともかく、個人的には今年No.1になるかもしれない。
ぜひ続編も作って欲しい。『逃亡者』の続編作ってしまえるハリウッドならやれるでしょう!?
既に鑑賞済みでイマイチだったという方も、これは友情ドラマという観点でもう一度観直して欲しい。新たな発見があるはず。
【キャスト】サミュエル・L・ジャクソン/ケビン・スペイシー/デイビッド・モース/ロン・リフキン/ジョン・スペンサー/J・T・ウォルシュ/リジーナ・テイラー
【監督】F・ゲイリー・グレイ
【製作】デイビッド・ホーバーマン/アーノン・ミルチャン
【脚本】ジェイムズ・デ・モナコ/ケビン・フォックス
【製作総指揮】ロバート・ストーン/ウェブスター・ストーン/デイビッド・ニックセイ
【撮影】ラッセル・カーペンター、A.S.C.
【美術】ホルガー・グロス
【編集】クリスチャン・ワグナー
【共同製作】アルバート・ベバリッジ
【音楽】グレイム・レベル
【衣装】フランシーン・ジェイミソン=タンジューク
【原題】THE NEGOTIATOR
【字幕翻訳】林完治
【製作年】1998年
【製作国】アメリカ
【上映時間】2時間19分
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コメント
TBありがとうございます。『交渉人』は大好きな映画の一つです。一度見ただけでは、「友情ドラマ」にまで、なかなか目が行きませんが2度見てみると、そのあたりの深さが見えてきますね。本当に面白いです。
投稿 ぴあ | 2005年6月27日 (月曜日) 10:47
ぴあさん
コメントありがとうです。
あまり話題にのぼらない作品のようにも思いますが、いい映画でしたよね。
これからもよろしくです。
投稿 かみぃ@管理人 | 2005年7月 2日 (土曜日) 09:47