【映画評】あの、夏の日~とんでろ じいちゃん
大林宜彦監督による新・尾道三部作完結編の心温まるファンタジー。
【満足度:★★★】(初掲:1999年7月25日 映画徒然文集※)
大林宜彦監督による新・尾道三部作の三作め、つまり完結編である。
呆けてしまった(と、まわりの大人たちには見える)おじいちゃんが、夢想がちな孫を連れて、空を飛び、過去と現代を行き来する心温まるファンタジー。
正直言って、大林作品というのはいつのころからか、大林ファンでないと薦めにくい作品が多くなってきているように思う。この作品もそれにあたる。
筆者自身、これが大林監督によるものでなかったら観に行ってたかどうか…。
絶賛するほどの作品とは思わないし、かといって駄作ではない。映画としての水準は高い方。ただ観客を選ぶのである。
おじいちゃんが空を飛ぶ姿を見てしらけてしまう人、または指差して笑ってしまうような人には間違ってもお薦めしない。そういう状態をひっくり返して観客の心を動かすほどの力はこの作品にはない。
もちろん大林ファンであれば随所に大林監督らしいテイストがちりばめられているので、最後まで裏切られることなく至福のときを過ごすことができるであろう。
大林作品一連のテーマの一つ、“語り継ぐこと”が今回の主題。
時くしくも世紀末。大林監督が世紀を越えて語り継ごうとする純粋な心が大林ファンならすでに見慣れたであろうあの懐かしい尾道の景色とともに描かれている。
しかも今回はCG合成も駆使して、おじいちゃんが子どもだった時代を再現している。映像の魔術師と呼ばれた大林監督の真骨頂である。
ただ、今まで大林監督なら普通に撮ってても心の故郷といえる姿を見せてくれていた尾道が舞台なのに、あえてCG合成を使って懐かしさを表現しなければならない原作を選んでしまったことに、少なくともこの新・尾道三部作の完結編としては少々残念に思う。
どうも今回は歯切れの悪い批評になってしまうのだが、それもこれも、“大林作品だから”で納得できる部分も、大林ファン以外の人が見るとおかしげに見えてしまう点が多々あるからだ。
例えば女子高生(中学生?)が胸元半裸のまま街中歩くか?など、素朴さや純粋さの表現としてもやはり「ん?」とならずにはおれない。
しかもこのマドンナの女の子(勝野雅奈恵)が主人公の男の子(厚木拓郎)に惚れた過程とか根拠とかがまったく描かれていないので、余計に監督のひとりよがりな少女像に見えてしまう。
さて、役者に目を移すと、ベテランの小林桂樹や菅井きんはさすが。主演の小林さんはもちろん、菅井さんも最後でベテランならではのいい味を見せてくれた。
このへんが大林作品のうまいところなのだが、長年連れ添った亭主への想いがひとことですべて伝わってくる演出&演技はこの作品をただのおとぎ話で終わらせない重みがあった。
これ以上はネタバレになってしまうので書かないが、菅井さんがあってこそ作品全体が映画として引き締まったのではないか。
若手に目を向けると、少年少女を描くのは得意の大林監督だけあってみんなそれぞれにいい感じ。
特に触れておきたいのは主人公・厚木くんの姉を演じた新人・佐野奈波。今回はそれほど出番がなかったが次を大いに期待の逸材。きっと大林監督もまた起用するであろう。
最後に星だが、大林ワールドにすんなり入れる筆者としては満足度は星3つ。しかし客を選ぶという意味で、お薦め度としてはもうちょっと下。
【キャスト】小林桂樹/厚木拓郎/菅井きん/勝野雅奈恵/佐野奈波/石田ひかり/久光邦彦/宮崎あおい/小磯勝弥/山本晋也/松田美由紀/嶋田久作/入江若葉/上田耕一/芥川志帆/林泰文/大前均/ミッチー・カーチス/天宮良/大和田伸也/ベンガル/根岸季衣
【監督】大林宜彦
【企画/製作】芥川保志/大林恭子
【原作】山中恒『とんでろ じいちゃん』
【プロデューサー】大林恭子/芥川保志
【脚本】石森史郎/大林宜彦
【音楽】學草太郎/山下康介
【編曲/指揮】山下康介
【撮影】坂本典隆
【美術】竹内公一
【照明】西表灯光
【音響デザイン】林昌平
【録音】内田誠
【編集】大林宜彦
【ビジュアルエフェクト】徳永徹三
【プロデューサー補】井瀧誠司
【助監督】南柱根
【制作担当】飯田康之
【音楽プロデューサー】土屋浩
【音楽ディレクター】加藤明代
【ヘアーメイク】岡野千江子
【主題歌】『やくそく』
[唄]佐野奈波
[詞/曲]學草太郎
[編曲]山下康介
【製作年】1999年
【製作国】日本
【上映時間】2時間3分
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